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新しい暮らしの始まった住まい  - M邸(福岡県太宰府市)-

オープンハウス

2014.03.16

オープンハウス&髭カフェを開催しました。たくさんの皆さま、ご来場ありがとうございました。

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竣工!

32前田邸140318.jpg南北に長い北面道路に接した土地に立つM邸は、道路側からはほとんど窓がありません。閉鎖的な印象になりますが、実はこれは自然の理にかなったプランのためで、通風や淡い全天光を取り入れるハイサイド意外はこちらからは見えないファサードとなっています。窓がない分、単調な表情をサイディングと左官仕上げのセパレートで緩和させました。玄関ポーチは2階の屋根まで高く吹き抜けたものとして、大屋根と一体の軒をかけました。左右にはほとんど余裕のない土地ですが、2台分の駐車スペースとアプローチを演出し、残りの敷地は建物裏のプライベートな庭に割り振りました。これからMご家族の楽しい暮らしが、ここで始まります。


敷地の南奥に、大きく吹き抜けた開放的なリビング

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限られた坪数でも、広々と暮らす

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 北玄関のM邸は玄関ホールから廊下を入ってくると南面の大きな開口のリビングダイニングに至ります。小上がりの和室や階段、キッチンに囲まれるようにこの空間があり、南面の大開口からはウッドデッキが続いていて、庭が広がっています。玄関から入られた人はここまで来て「わあ、広い」と必ず言われます。大きく吹き抜けた部分には高い位置にハイサイドの窓があり、光をおろしてくれます。限られた坪数の中で、最大限広々と暮らすリビングダイニングです。

一本の柱で、秩序ある空間に

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 南面の大きな吹き抜けのリビング空間と繋がってはいるのですが、その北側のダイニングはぐっと天井高も押さえた場所になっています。構造上欲しい柱の位置でもいつも腐心するのですが、今回はこの位置に。柱一本が立っているだけで、私たちは廊下部分とダイニング部分を区別した空間として認識するようです。この柱の右手に、おおきなダイニングテーブルが座れば、ダイニングの見立ては完成。

追記 July 2015

32M邸20150707_1687581.jpg一年検査に伺いました。ちびちゃん二人がお出迎え、相変わらずの元気溌剌で、男の子二人だからじっとしていません。打ち合わせの渦中、おむつしてまだ日本語もままならなかった下の子が、「こんな事も出来るよー」とリビングの5寸柱にするするっと上り詰めた瞬間、「やめなっさいっ」とパパが捕獲の図です。お打ち合わせから長期にわたりご家族を計画を進めて行く中で、私などは親戚のおっちゃんのようになってきますが、どこのお宅も久しぶりに伺うと、子どもたちの成長著しく、微笑ましい親戚がまた増えた感覚に浸れます。

コーナーが美しい小上がりの和室... どう仕切る?

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 5帖ほどの使い勝手が良い和室。掃出しの開口からデッキへ脚を下ろせば、昔の縁側の感覚で腰掛けることが出来るのが魅力です。リビング側からはちょっと腰掛けることが出来る良いコーナーになったのですが、建具は奥の袖壁からコーナー用の細い障子を引き出してきてコーナーをおさめるというからくりとなりました。閉じるとご覧のように不自然でなく行灯のような和室コーナーが閉じられます。開けると柱もなく開放感が増す両方の設えを実現出来ました。


システムキッチンもオーダー品で

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 長年私の図面でキッチンを制作してくれる宇美町の会社のオリジナルキッチンが入りました。機器から寸法、仕上げに至るまであらゆるオーダーに対応してくれます。住まい中の扉に合わせたナラ材の仕上がりはやはり上々です。機器をメーカー織り交ぜて設置出来る事や足下を膝くらいまで掘り下げて腰の負担を軽減して作業し易くする、昔から私が描き続けているキッチンとなりました。奥様はまずここに立ち、満面の笑みで私にありがとうと言って下さいました。長年の夢がかなったそうです。


階段こそ豊かに... それがSiZE流

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 リビングダイニングから二階へつづく、緩やかな階段です。この階段の緩やかな勾配は自社基準。先日のオープンハウスでは子どもさんがじゃれあって、逆向きにハイハイをするように降りてきて驚かされました。全体の床面積の制約から貧しく作りがちな階段ですが、2階の空間をいつまでも有効に使い続ける事を思えば、階段こそ豊かに創り上げるべき部分だと、私は思います。これも持論ですが、階段がつまらない住まいは、総じてつまらない空間である事が多いです。緩やかな勾配の階段は、昇るときよりもむしろ降りてくる時にその本領を発揮します。手摺を触る事なく、意識せずにお客様が降りて来られると、私は心の中でガッツポーズなのです。

廊下に書架をしつらえて、家族だけの小さな図書館

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 階段を上がった廊下部分の手すり壁に、家族共有の書架棚をよく設けます。特に子どもたちにとっては、大好きな本を住まいのなかのそこかしこで手に取れる環境が大切です。本を読む習慣は、机の上だけでは培われません。何もなければ単なる昇降装置や移動スペースとなる階段や廊下が、こういう書架のしつらえで家庭図書館になり空間が豊かになります。廊下や階段に座り込んで、本を手に取る子どもたちをみると、私などはしてやったりです。

小さな二人のお子さまのための、フレキシブルな子ども室

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 2階に上がり、書架のある廊下を進むと、大きな空間が子どもスペースです。二人のお子さんはまだ小さいので、しばらくは2段ベッドと遊び場スペースくらいでもよいのかもしれません。やがて二人分に家具などで仕切って使えるように、窓やコンセント、照明器具の位置などを二分して配置しています。そして子どもがやがて巣立てば、またこの状態に戻ればよいのです。ご夫婦の趣味のスペースとしてでも、第二のリビングとしてでも使えるかもしれません。とにかく住まいは、息長く、家族の成長や変遷に追随して、いつまでも使われ続けなければなりません。柔軟性は重要です。


朝日の入る小さな吹き抜けで小さな贅沢...ボイド空間

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 子どもスペースの北面には、東側の矩形の窓から淡い朝日が入るボイドがあります。この下は玄関ホール。訪問者が玄関に現れると、ここから階下を見下ろせるというしつらえです。ほんの少しの筒状の空間なのですが、毎朝、玄関ホールを淡い明かりで満たしてくれるし、2階の空間から階下の空気感を何となく共有することができます。階段ホールやリビングの吹き抜けと対になって、上下階の空気を平均化してくれます。一見無駄と言えば無駄なのですが、こういう空間の効果こそが、住まいを豊かなものにするか、つまらないものにするかの境目だったりするのです。右手の朝日が入るはめ殺しの窓は、外側も玄関ポーチの深い庇の内側にあるので、頻繁にお掃除をしなくても汚れない場所に取り付けてあります。昼間は全天光を、夜はブラケットの明かりを上下階で共有し、音と空気を循環させる小さな贅沢になりました。


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