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髭の住まいづくり報告  - 「子どもの城ほんじょう」(福岡県北九州市)-

開所式

2015.09.27

38こどもの城20150927_1779020.jpg 春の竣工以来、既に利用者さんへのサービスは始まっていて、現在延べ16人のお子さん達がこの場を利用されており、このたび、万を期しての開所式にお招き預かりました。私の気分としてはスタッフ側の一員の末席くらいつもりだったのですが、何とオーナーのお隣の来賓席をご用意いただき、少しばかり気恥ずかしい、でもとても嬉しい一時を過ごさせていただきました。
 企画から建築部門を一手にお任せいただいて関係者の皆さんと竣工まで走ってきただけに、その実情は大変気になります。「優しいほっとする空間でお子さん達も落ちついている」というご評価を頂き、とても安堵いたしました。確かに、この日は利用者のお子さん方とも同じひとときを過ごしましたが、ご来賓の皆さんの祝辞の最中も、本当に大人しくお話を聞かれて、最後には皆さんの前でひとりひとり感想を述べられる和やかな雰囲気。私の仕事としては、常日頃、住まい作りで実践している事ばかりで取り立て言うほども無いのですが、学校から「ただいま」と我が家のような気分で過ごしてもらう施設としては「住まい」と同じ設えで良い、という基本方針は間違っていなかったかもしれません。皆さんで和やかに心のこもった昼食をとりながら楽しい歓談の時間でした。


内覧会が終了しました。

2015.02.11-14

38子どもの城150218.jpg北九州市八幡西区の放課後等デイサービス「子どもの城ほんじょう」が晴れて完成となりました。近年ほとんど非住宅のお仕事はないのですが、今回はオーナーのNご夫妻との浅からぬご縁をきっかけに、良い勉強となりました。雲一つない快晴の空の下、内覧会は3日間に及び、最終日は私も終日会場におりました。こういう施設は実際に子どもさんたちが中に入り、どう動くかが勝負です。開場を訪れた入所を検討されている子どもさんたちが、ためらいもなく入ってきてくださって、遊具に収拾してすぐに遊び始める様は、設計を進めてきた私にとっても涙が出るほど嬉しい瞬間でした。普段から、私は住まい手との打ち合わせの中で、住まい手の身体的特徴や行動のパターンなどを出来るだけ読み解き、無理のないフィット感のある空間をとつとめるのですが、今回は障がいを持つ子どもさんたちです。随分前から近隣の施設などをご夫妻と視察しながら、この建物を暖めてきました。子どもさんたちは敏感で反応も正直です。受け入れてくれなかったら、拒絶されたらどうしよう、大人の思い込みで作っていないか、などとこの瞬間までは本当に心配でした。しかし、幸いにもその心配は瞬時に解けて行きました。彼らは無垢のフローリングの上を自由に歩き回り、15センチ角の桧の柱に手をかけてぐるぐる回り、広幅の杉板の腰壁に身体を寄りかからせながら、遊びに集中していました。住まいと同じに、という訳には行きませんが、それでも出来るだけ、家庭と同じような雰囲気につとめたのが功を奏したようです。施設関係者の方達は、無垢の素材を絶賛してくださいました。やはりコスト面などで、プレファプや既築の建物の流用が多いのですが「いやあ、無垢の木はいいですね。うらやましい」と室内を見回して褒めてくれました。
これから場内整備をし、開所に向けての準備が進みます。私の仕事は道半ば、実は敷地奥に、オーナーの為のご自邸の建設が待っております。引き続き、計画を進めて行きます。ご来場の皆様、ありがとうございました。


内覧会のお知らせ

放課後等デイサービス「子どもの城ほんじょう」の内覧会が催されます。

子どもの城ロゴ.jpg北九州市八幡西区、本城総合運動公園の北側に面していますので比較的わかりやすい場所だと思います。2月12日から14日まで、いずれも10時半から16 時までの時間帯です。施設内では、期間中は時々ご紹介しているkotofactotryをはじめとする手作り雑貨などの販売も行われていますので、障がいを持つお子さんのための「放課後等デイサービス」に関心のある方、実際にお子さんの事でご相談のある方、エリアで施設をお探しの方、また自分のエリアにもこういう施設がと思われている方、分からないけど、どんな施設かなと思われている方、とにかく少しでもご興味をお持ちの方、お気軽にお立ち寄りください。
一年間、施設見学から始まり、制度の把握、現場の皆様とのディスカッションなど、設計〜工事まで、本当に勉強になりました。色々な事が、まず携わる事だと実感しました。皆様どうぞお越し下さい。
場所 北九州市八幡西区御開4丁目16-13
日時 2/12(木)~14(土) 10時半~16時


間もなく完成

2015.01.12

38子どもの城150112.jpg「子どもの城ほんじょう」の構想を思い立ったNご夫妻が相続された土地に私費を投じて建設したいと私にその思いを語られて一年半、二人三脚でのここまでがあっという間です。先日、住宅センターの完了検査を受け無事合格いたしました。工事は諸々最終段階に入り間もなく完成を迎えます。写真はプレイルームで子どもたちが過ごす場所。こういう施設では、掃除のしやすいシートばりなどにカラフルなマットを敷き詰めたりするのですが、あえて無垢のフローリングにしたのは普通の住まい空間と同じ安心感の演出であり、手で振れる場所に本物を感じてほしいという私の重いです。自然塗料で仕上げて座ったりあるいは寝転んだりするごとに木の香りを感じてもらいます。横に走る桁には稼働間仕切りの建具がつられ、T.P.O.に合わせてこの状態で使ったり三分割するように使えます。いよいよ開所の準備が始まります。


2014.12.14

工事が急ピッチで進められています。

38子どもの城141213.jpgオーナーとのお打ち合わせで現場に行くと、北海道から送らせたミズナラのフローリングを一枚一枚、実加工を叩いて入れては張り進めていくという細やかな作業に棟梁が没頭していました。一枚一枚恐縮ですと声をかけると「だいぶん慣れました」と笑顔のお若い棟梁。子どもさんによっては、床に直に座ったり、あるいは寝転んだりしてあそぶ事も多いので、肌で触れたときに嘘のない仕上げにしたくて、普段の住まいづくりのように無垢のフローリグを張っていきます。自然塗料で染めるだけの仕上げになりますが、私はしみ汚れよりもその触れた感覚を大切にしたいと提案しました。こういう施設などでは、ついつい掃除しやすいようにとビニールシートなどが多いのですが、それでは敏感な子どもさんにはベタついて不快きわまりない事必定です。


38子どもの城141213-2.jpg外装は、防火規定がらみで安価に無垢の木を張る事は叶いませんでしたが、優しいウッディーな色合いで仕上げる想定で決めたボードもいい感じです。いつもはツートンに仕上げるために少しシャープさを出すために濃いめの色調で行くのですが、今回は子どもさんたちに威圧感がないように浅めの優しい色調です。私費を投じて施設をと願われるオーナーの予算は無駄には出来ませんから、常に究極の選択が続きます。いくつかの施設を見学させていただいたり、実際に子どもさんたちが遊ぶ姿を思い描きながら、頭の中で練ってきた事が、少しずつ具体化していきます。オーナーにそのアイデアの一つ一つも実際に確認していただき、「立派になってきた」と喜んでいただきました。寒風吹きすさぶ中ではありましたが、心温まるミーティングです。残り時間も後わずか。気を引き締めて完成まで駆け抜けます。


2014.11.28

工事中の現場前に、「子どもの城」のイメージを伝える看板をかけてもらいました。

38子どもの城141128-1.jpgイメージスケッチと完成予想模型写真、ご利用希望やスタッフとしての参加のための連絡先を配置したちょっとアットホームな看板のバックには、淡い黄色で子どもがよく描く太陽。優しい日差しの入る施設への想いを込めました。3月の開設に向けて、関係者一同で邁進していきます。


38子どもの城141128-2.jpg昨日は、運営されるワーカーズコープさんとの現場打ち合わせ。コンセントや照明スイッチの位置などの最終確認を行いました。これまで私が見学や体験をさせていただいた施設でも、通常とは違った配慮に目を見張るものがたくさんありました。今回の「子どもの城ほんじょう」では、そう言う工夫を随所に施したいと思います。スイッチ類を子どもさんの届かない高さに設定したり、コンセントも適材適所。可動部分は触れてみたくなる、動かしてみたくなるのが子どもの心情、それを刺激しない形で安心してもらうための工夫です。
現地にて、実際の空間とヴォリウムを見ながらの関係者の丁々発止は、ブラッシュアップには最適です。この結果のアドリブ変更は全体のクオリティーをアップするチャンスなのです。お話の中で、私が外の施設などを見てきて怖々工夫している部分の確認もしました。概ね皆さんご賛同いただいて安心しました。近年ことあるごとに住宅づくりから離れ、このプロジェクトについて考えてきた事を具現化すると、結局これまでの住まいづくりのノウハウが存分に生かされるという結果にたどり着きました。考えてみると、子どもさんはおうちのような安心できる場所で、過ごしたいのですよね。最後まで、頑張ります!!


上棟!!!

2014.11.08

38子どもの城141108-2.jpg子どもの城のプロジェクトは、一年半前、オーナーであるN氏との再会により始まりました。光栄にも、20年近く前にお知り合いになることがあって、それ以降ずっとN氏は私の事を覚えてくださっていたのです。ご自分の住まいを建てる時はと思っていて、住まいと併設させる施設をも私に委ねてくださる好機をいただいたのです。「放課後等デイケアサービス」というカテゴリーは、近年児童福祉法に加えられた障がいをもつ子どもさんが放課後の時間に利用する通所施設なのです。勉強不足の私には、そう言う存在すら存じ上げないところから始まり、福岡市内の施設見学に訪れたり、既設の施設立ち上げを経験された方達のお話を伺いにいったり、実際に利用している子どもさんたちの観察の時間を設けたり、お世話をしている職員の方達のヒアリングをしたりと少しずつ勉強させていただいてきました。戸建て住宅をリフォームした施設や、マンションの一室を利用した施設などがまだ多い現状の中で、新築の施設はまだまだ珍しいものだと言えます。手探りで始まったプロジェクトもその計画が進み着工、いよいよ本日の上棟となりました。


関係者一同、思いを新たに。

38子どもの城141110-2.jpg上棟に際して、オーナー様からの直会がありました。昼食の前に関係者全員で円陣を組んで、奥様のご挨拶を受けました。子どもの城の企画からここまでのお話もされて、関係者一同、思いを新たに完成までの安全と確実な工事を誓いました。
娘さんがKOTO Factory名義で制作をしているシルクスクリーンの手ぬぐいが配られて、一同のテンションも上がりました。上棟で魔除けに、黄色や赤の手ぬぐいを身につけるという風習は各地にありますが、可愛いイラストのたくさんついたKOTO Factoryの手ぬぐいの効果もまた格別です。


清々しい空気。

38子どもの城141108.jpg上棟といえばベテランを通り越した諸先輩が集まるのが常ですが、今回の上棟は勝手が違います。たまたまなのですが、20代の棟梁を筆頭に若手の大工さんが勢揃いしてくれました。きびきびと動く彼らの手際に、ギャラリーはそれだけで清々しくなりました。決して大きな建物ではありませんが、学校が終わった放課後に子どもたちが安らげる空間にしたいと、限られた予算の中で色々と工夫を考えてきた施設です。若い皆さんのパワーと好天が幸先の良さを感じさせてくれます。私にとっては、関係者の皆さんにご協力いただいて手探りで始まったプロジェクトかここまで来た事に本当にほっとしています。住まいづくりで培ったテクニックをもって、少しでも良い子どもさんたちの居場所になればと思います。


作戦会議中。

38子どもの城141110-1.jpg現場はしばしば野営の作戦本部となります。組み上げられていく現場を見ながら、これから進む工程での詳細ディテールの詰めを行っていきます。現場では、原寸になって初めて縮尺図面では分からない様々な課題が浮き彫りになってくるので、アドリブでそれを解決していきます。木造の建築の場合、大まかにいえば、水の切れを良くする事、万が一のパーツ交換が可能な組み立て手順にする事などでディテールが決まっていきます。その場で手描きのスケッチで主任監督と認識を共有していく事が、私たちの現場での大きな役割の一つかもしれません。主任監督とのこういうプロセスは、建物の完成まで常に重ねられていきます。


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