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髭の25年の想い

25年前の模索から...

 京都で社寺木造の設計の仕事に携わり、帰福して紆余曲折、やがて開業した私は、素直に、「福岡の冬は寒い」と思いました。その後、私の想いが、多くのお仲間との幸運な出会いから今のような住まいづくりに続いていくのです。東京のかたが「九州」と言うと短パン・アロハで仕事し、街路にはフェニックスが立っている南国イメージでお話をするのを尻目に、私はいつもこう言った。「雪も積もれば無暖房の教室の後のバケツに氷が張る福岡なのです」と。

北海道に通いながら勉強し...

 「高気密・高断熱住宅」と言う言葉は、当時とんでもなく特別な工法の住宅だと言う感覚が蔓延していました。「密閉すると窒息する」とか「日本の家は夏向きに建てる方が良い」などという言葉は声高に上がり、私たちの信念は時として大きく傷つけられたものです。しかし、北海道の視察を繰り返すたびに、素直な視点に立てば、これは北国でもそうでない国でも有効な手法であると思わないではいられなかったのです。

九州型高性能をもとめて

 以来福岡を中心に、より快適な住まいを創造し続けてきましたが、気候風土によって、様々な手法の力点の差があることが分かってきました。「高気密・高断熱」とひと言で言っても、気候風土によって、もっと言えば、その土地固有の設計のあり方があるはずです。「高気密・高断熱の家は夏にオーバーヒートする」「やっぱり九州には合わない」そんな言われ方がしたのもその頃です。随分懐疑的になり辞められた方も多いのですが、私はお仕事ごとにその設計仕様を改善し続け、現在に至っています。

パッシブハウスとの出会い

 それから、2009年、森みわさんの『世界基準の「いい家」を建てる』を読みました。その時初めて世界の潮流として、「パッシブハウス」と言う言葉が私に飛び込んできたのです。その時はその程度でした。

福岡パッシブハウスへ

 とある人から、福岡でパッシブハウスを実践したいからやってみないかというお誘いをいただきましたが、その時点で私にはそのスキルがありませんでした。大変魅力のあるお話しでしたが、その時点では実現しませんでした。のちに、これも有り難いお誘いで、森みわさんと出会い、パッシブハウスジャパンに仲間入りしてすぐ、福岡での森さんとの共同設計のお話を頂きました。私は即答でお受けしたのです。折しもそれは東北の大震災3.11と同じ時期。起工式は3月10日。11日は森さんと宮崎県日向であの震災を知りました。以後、私の住まいづくりへの価値観は大きく変わり、いや変わったと言うより、それまでモヤモヤとしていた想いが大きく一つの信念に変わり、以降の活動と今日があります。
 御陰さまで福岡パッシブハウスは、国内3棟目、九州初のファイスト博士率いるドイツ国際パッシブハウス研究所の認定するパッシブハウスとなりました。

パッシブデザインの高性能住宅の可能性

 パッシブデザインとは、地の利を活かし、太陽の恵みを最大限に利用し、より省エネルギーで環境負荷の少ない本当に快適な居住空間を実現するための設計手法です。25年前、私たちが高気密・高断熱住宅に取り組み始めた頃にはまだ、個々の設計にその性能を実証する演算ソフトが身近にありませんでした。昨今、様々な計算ソフトによって、「作る前」にその建物の性能が計り知れます。私たちが使っている「建もの燃費ナビ」もその一つで、ドイツ国際パッシブハウス研究所のソフト「PHPP」がそのエンジンとして動いています。このソフトで私たちは月々の光熱費まで想定した設計が出来るようになってきたのです。

身近な超高性能を目指して

 もはや、暑い・寒いのストレスを感じながら暮らすことを前提とした住まいづくりは本当にあり得ない。技術的にも解決できることが増えてきたのだから、当然の権利として、あらゆる人が、暑さ寒さに煩わされない暮らしが出来るように、私はこれからも自らの仕事に邁進していきます。全国に心強いお仲間も出来ました。日本の住まいはまだまだ寒い、そして蒸し暑い。2020年から義務基準も出来少しずつは変わりますが、本音を言えば足りない基準です。私たちは、その後もしっかりと性能が担保できる住まいを目指していきたいと思います。

パッシブハウスを求めて

 ドイツ国際パッシブハウス研究所を率いるヴォルグガング・ファイスト博士にお目にかかったのは、2014年の1月が最初です。インスブルック大学に授業が終わられたばかりの博士の教室に伺い、パッシブハウスについてのお話を伺いました。パッシブハウスには厳格な基準があります。私たちはその基準に叶うものだけを「パッシブハウス」と呼称します。

  • 冷暖房負荷が15Kwh/㎡以下  ※1
  • 一次エネルギー消費量(家電も含む)120kwh/㎡以下   ※2
  • 50paの加圧時の漏気回数0.6回以下(日本のC値換算で約0.2㎠/㎡以下)  ※3
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  • ※1 室内を一定温度に保つための冷暖房にかかる負荷エネルギー(国内ハウスメーカー次世代基準レベル平均値103.7kwh/㎡)
  • ※2 消費するエネルギーを由来の自然環境から得ることが可能なエネルギーに換算した場合のエネルギー消費量。(国内ハウスメーカー次世代基準レベル平均値154.35kwh/㎡)
  • ※3 国内ハウスメーカー平均値4.25回/h

 現時点で日本の住まいからすれば「超」がつく高性能です。同行の仲間からは、民族や文化、生活習慣によってもこの必然性は揺るがないのかという質問がありましたが、博士は心配するなと滔々とその性能の妥当性を研究結果のグラフから解説してくださったのです。
 私たちの仕事は、必ずしもすべてがパッシブ基準にはなっていません。しかし、私はパッシブハウス基準を視準として住まいづくりをしたいと思います。様々な要因で、パッシブ基準に満たない住まいであっても、そこを目指すことによって色々な方向性が定まってきます。のちのちのレトロフィットに委ねたりすることも出来ますし、自ずと素材のチョイスやディテールの違い、現時点の妥協点も異なってきます。日々進化する技術革新やアイデアで、そのギャップを少しでも小さくしていきたいと思います。